蔵前工房について

蔵前工房の思い

蔵前工房代表 高橋悌一
日本で物作り

わが国で産業の空洞化が言われて久しく、グローバル化の進展にともない、国際分業の名の下に国内製造業はどんどん海外に流出してゆきました。その結果、若い人たちが職業選択に際し、いわゆる「手に職をつけたい」と考えても、その選択肢は調理や製菓、理美容、建築関係等限定的で、ものづくり、中でも我々に身近な消費財の製造に関わる仕事につくことは、なかなか難しくなってしまいました。世の流れとはいえ、何だかさびしいなあ、ものづくり楽しいのになあ。またそういう仕事を必要としている人もきっといるだろうに、それが仕事に出来ないなんて。それでいいのだろうか?そんな思いを持ちながら、過ごしてきました。 当社では長年にわたり財布やハンドバッグ等の革製品を日本国内で製造してきました。特に当社は業界では珍しく自社工場を持ち、社内生産と外部の職人さんへの外注との両立てで生産を行っています。その外注の職人さんは高齢化がすすんでいます。そして後継者はまず居ません。その原因の大きなものはグローバル競争によるコスト低減圧力です。かつては自営の職人さんは、一般の勤め人に負けない収入を得ていた。仕事はきついけど頑張れば家が建つ、という時代がありました。けれども近年ではなかなか充分な報酬が得られていないというのが実情です。いわば我々が自らMade in Japanの価値を下げてしまったということで、そのことは誠に忸怩たる思いです。
このままでは、国内生産は先細りです。けれども何とか「手仕事」によるものづくりの職業をこの国に残したい。そんな思いはますます募ります。一方当たり前のことですが、熟練の職人は一朝一夕には出来上がりません。そこで、手をこまねいていても仕方がないので、自社で技術者を養成することにしました。募集を掛けると予想を超える多くの応募がありました。やはりものづくりを仕事にしたい人は多いのです。現在ベテラン社員の指導の下、順調に育っています。彼らが一人前になる頃、活躍の場として、しっかりとしたJAPAN BRANDが確立されていることを目指して「蔵前工房」はスタートしました。

革に再び命を

エコロジーというカタカナ語が一般に広まるようになって、かれこれ40年になるでしょうか。もともとは生態学のことですが、環境破壊や公害問題が表面化する中、それらを解決する、あるいはそれらを起こす経済活動に対抗する運動、活動、思想を表す言葉として使われるようになりました。さらに地球温暖化問題を契機に、「循環型社会」「持続可能性」「リサイクル」「もったいない」・・・とエコの世界は広がり、21世紀はまさにエコの時代といえます。
さて何の話か?「革」の話です。革はもともと動物の皮です。おもに牛、豚、馬、羊、やぎ等々です。これらの動物は皮をとるために殺されたのではありません。大半はわれわれ人間が食用にするために、育て、命を頂いたのです。革は肉のいわば副産物です。利用しなければ棄てられるものですから、使えば廃物利用です。そういう意味で革はとってもエコな素材なのです。廃物といっても革はなんとも魅力的な素材です。「蔵前工房」ではこの魅力的なエコ素材をたっぷり使っています。外側だけでなく、通常合成皮革や布地を使う場合も多い内側の造作部分も極力革を使うようにしています。
また21世紀のムーブメントとして、殊にわが国では東日本大震災以降顕著になってきたのが、物や消費に対する考え方の変化です。大量生産大量消費、使い捨てをやめ、良いものをじっくり選び、大切に長く使いたい。この価値観にも革素材はよく合っています。新品より程よく使い込んだものの方が、味わい深くて魅力的。エイジングが肯定的に語られる素材として、革はデニムと並んで最右翼といえるでしょう。「蔵前工房」に限らず、バッグや鞄でも、もっと革素材が選ばれるようになれば良いなと思っています。

お客様の価値

「蔵前工房」について、いろいろ思いはあるのですが、お客様にとっては「それがどうした?」「だから何なの?」かもしれません。「蔵前工房」の製品は観賞用の美術品でもなければ、ファッション・アイテムでもありません。実用に供するいわば「道具」です。道具は使ってナンボです。使い勝手の良さこそがまずお客様にご提供できる「価値」だと考えています。 第一号の製品である「スマート長財布」は、おかげさまで実用新案が認められました。第二弾の「多機能コンパクト財布」も自分自身使ってみて、これはぜひ多くの人に使っていただきたいと思える製品です。現在、新製品をいくつか企画中ですが、どれも機能的なお勧めポイントがあります。
「蔵前工房」は、まだ生まれたばかりのブランドですが、これからも、どんどんアイテムを広げていく予定です。使ってみて気に入っていただける製品、愛着を持っていただける製品を目指します。お客様に「満足」という価値をご提供でき、さらに次の新製品を楽しみにしていただけるような、そんなブランドにしたいと思っています。